クオリティ・オブ・ライフとは、直訳すると「生活の質」ということです。広い意味では、仕事や人間関係・衣食住をはじめとした経済面や精神面などで不安や心配がなく、充実した幸福度の高い生活を送ることを意味します。医療・介護関係においては患者自身が主体性を持ち、尊厳をもって生きるという意味で使われる言葉です。
医療現場においてはとかく治療・延命を重視しがちであり、患者の意志を置き去りにすることが決して少なくはなかったという現実があります。しかし、激しい苦痛を伴う侵襲治療を継続することや、いたずらな延命がはたして患者にとって真の幸福につながるのかどうかといった疑問が、近年持たれはじめました。その中で、クオリティ・オブ・ライフという考え方が浮上してきたのです。もちろん、病気の治療に全力を尽くすこと・一日でも長く生きられるよう治療を施すことには、大きな意味があります。しかし、そのために患者の人間としての尊厳が軽視されたり、ただ苦痛に耐えることにのみ時間を費やして希望を持つことも幸福を感じることもできないようなことになっては、本末転倒です。
本来、どんな治療を受けるか受けないかというのは、患者の側に決定権があるはずのことです。そこで、最近ではインフォームドコンセントを重視して丁寧でわかりやすい説明を行い、患者自身に治療を受ける意志があるかどうかを事前にしっかり確認する病院が増えています。その中で、ホスピスや在宅での緩和医療に関心が集まっているのも注目すべきことです。